
9月に入り、東京でも雨の日が続いています。
当院でも最近、
「雨の日が続いて、なんとなく気分が沈む」
「朝から身体が重い」
「眠っているのに疲れが取れない」
「やる気が出ない」
「頭痛や肩こりが悪化した」
「気分が不安定になってきた」
といったご相談が増えています。
「天気が悪いから仕方がない」と思ってしまいがちですが、天候や季節の変化は、私たちの身体や心に影響を与えることがあります。
雨の日が続くと、気分が落ち込みやすくなる?
実際に、気象条件と抑うつ症状との関連を調べた研究があります。
O’Hareらは、50歳以上の8,027人を対象に、季節や気象条件と抑うつ症状との関連を調べました。その結果、前月および当月の降雨量が多い地域では、抑うつ症状がやや多く認められたことが報告されています。
また、日照時間が長い地域では、抑うつ症状が少ない傾向も認められました。
もちろん、この研究だけから「雨が降ると、うつ病になる」と結論づけることはできません。
しかし、天候や日照などの環境要因が、気分や心身の状態と関連する可能性は示されています。
「自律神経」と心の状態にも関係があります
自律神経は、心拍、血圧、体温、消化など、私たちが意識しなくても行われている身体の機能を調整しています。
そして、自律神経の活動と感情・気分との関連についても、これまで多くの研究が行われています。
2023年に発表されたレビューでは、心拍変動(HRV)を指標として自律神経と感情状態との関係を検討した研究がまとめられ、ネガティブな感情状態と副交感神経活動の低下との関連が報告されています。
つまり、
ストレス → 睡眠や自律神経の変化 → 身体の不調 → 気分の落ち込み
というように、心と身体はお互いに影響し合っています。
そのため、「気分が落ち込んでいるから身体がつらい」のか、「身体の調子が悪いから気分が落ち込んでいる」のかを明確に分けることは、必ずしも簡単ではありません。
秋は「日照時間の変化」にも注意
季節が秋から冬へと進むにつれて、日照時間は短くなっていきます。
日照時間の減少は、季節性うつ病(Seasonal Affective Disorder:SAD)との関連が研究されてきました。
SADは、秋から冬にかけて抑うつ症状が出現し、春になると改善するという季節性を特徴とするうつ病の一つです。
その背景には、体内時計(概日リズム)や光による生体リズムの調整などが関係すると考えられています。
ただし、季節による気分の変化については研究結果が一様ではありません。
41研究を対象とした系統的レビューでは、冬に抑うつが多いことを示した研究がある一方、明確な季節性を認めなかった研究もあり、一般の人すべてに「冬になると気分が落ち込む」という単純な季節性があるわけではないことも指摘されています。
大切なのは、「季節だから仕方がない」と決めつけるのではなく、自分自身の心身の変化に気づくことです。
季節の変わり目にできる「自律神経ケア」
では、雨の日が続く時期には、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。
① 朝はできるだけ決まった時間に起きる
休日でも起床時間が大きくずれると、睡眠・覚醒リズムが乱れやすくなります。
まずは、毎日できるだけ同じ時間に起きることを意識してみましょう。
② 朝の光を浴びる
雨の日でも、朝になったらカーテンを開けて、できるだけ明るい環境で過ごしましょう。
天気がよければ、少し外を歩くのもおすすめです。
光は体内時計の調整に重要な役割を果たします。
季節性うつ病に対する光療法については、多くの研究があり、現在も重要な治療選択肢の一つとされています。
ただし、市販のライトを自己判断で治療目的に使用することについては、症状や体質によって注意が必要です。 強い抑うつ症状がある場合には、まず医療機関にご相談ください。
③ 軽い運動をする
「運動しなければ」と頑張りすぎる必要はありません。
10~20分程度の散歩やストレッチなど、無理なく続けられるものから始めましょう。
④ 睡眠を大切にする
季節の変わり目には、眠気が強くなったり、反対に寝つきが悪くなったりする方もいます。
「眠れないから早く寝なければ」と焦るよりも、毎日の起床時間を一定にすることをまず意識してみましょう。
⑤ 頑張りすぎない
気分が落ちているときに、「もっと頑張らなければ」と自分を追い込むと、さらに疲れてしまうことがあります。
雨の日は、
「今日は最低限のことができれば十分」
くらいに考えることも大切です。
「天気のせい」と思っていても、症状が続く場合はご相談ください
雨の日に気分が沈むこと自体は、必ずしも病気というわけではありません。
しかし、
- 気分の落ち込みが何週間も続いている
- 以前好きだったことが楽しめない
- 仕事や家事に集中できない
- 強い不安や焦りが続く
- 夜眠れない、または寝すぎる
- 食欲が大きく変化した
- 朝から強い倦怠感がある
- 人に会うことが億劫になった
- 日常生活に支障が出てきた
という場合には、単なる「季節の変わり目」とは考えず、一度専門家に相談することをおすすめします。
季節性の変化と抑うつ症状との関係は複雑であり、「雨だから」「自律神経のせいだから」と一つの原因だけで説明できるものではありません。
心と身体の両方の状態を確認しながら、その方に合った対応を考えていくことが大切です。
まとめ
9月は、夏の疲れが残っている一方で、気温や湿度、日照時間などが少しずつ変化していく時期です。
特に今年のように雨の日が続くと、
「なんとなく身体が重い」
「気分が晴れない」
「何もする気になれない」
と感じる方もいるかもしれません。
そんなときこそ、睡眠、朝の光、食事、軽い運動など、毎日の生活リズムを少しだけ見直してみましょう。
そして、症状が続く場合には、「季節のせい」と我慢しすぎないことも大切です。
心と身体はつながっています。
「少し調子がおかしいな」と感じた段階で、ご相談いただくことも選択肢の一つです。
麻布十番クリニックでは、気分の落ち込み、不安、不眠、ストレスによる心身の不調などについてご相談いただけます。
つらいときは、一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。
参考文献
- O’Hare C, O’Sullivan V, Flood S, Kenny RA. Seasonal and meteorological associations with depressive symptoms in older adults: A geo-epidemiological study. Journal of Affective Disorders. 2016;191:172-179. doi:10.1016/j.jad.2015.11.029.
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- Rothenberg M, et al. Lifestyle modification as intervention for seasonal affective disorder: A systematic review. Journal of Psychiatric Research. 2024;174:240-249. doi:10.1016/j.jpsychires.2024.03.053.
- Wan Y, Ding J, Fan M, Huang H. Effectiveness of visible light for seasonal affective disorder: A systematic review and network meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2025;104(27):e43107. doi:10.1097/MD.0000000000043107.


