抗うつ薬をきちんと服用しているにもかかわらず、「気分の落ち込みが十分に改善しない」「以前よりは良くなったけれど、意欲が戻らない」と感じることは少なくありません。
そのような場合に検討される治療法の一つが、トリンテリックス(ボルチオキセチン)にレキサルティ(ブレクスピプラゾール)を追加する強化療法です。この組み合わせは、近年「トリレキ療法」と呼ばれることもあります。
レキサルティを追加する目的は、薬の数を増やすことではありません。抗うつ薬とは異なる作用で脳内の神経伝達物質のバランスを調整し、抗うつ薬単独では十分に改善しなかった症状をさらに改善することを目的としています。
特に、
- 気分の落ち込みが残っている
- 意欲が回復しない
- 何をしても楽しめない
- 集中力や判断力が戻らない
- 「あと一歩」の改善が得られない
といった症状が続いている場合に、有効な治療選択肢となることがあります。
目次
- 強化療法(増強療法)とは?
- なぜレキサルティを追加すると効果が期待できるのか
- トリレキ療法が向いている方
- 副作用について
- よくある質問
- まとめ
1.強化療法(増強療法)とは?
うつ病治療では、まずSSRIやSNRI、あるいはトリンテリックスなどの抗うつ薬を適切な量・期間使用し、その効果を評価します。
しかし、抗うつ薬だけでは十分な改善が得られない患者さんは決して珍しくありません。
そのような場合には、
- 抗うつ薬を変更する
- 抗うつ薬を追加する
- 現在の抗うつ薬に別の作用をもつ薬を加える(強化療法)
という複数の選択肢があります。
強化療法は、現在の治療で得られている効果を生かしながら、さらに症状の改善を目指す治療法です。
うつ病に対する抗うつ薬単剤による効果は30~65%くらいといわれています。1剤の抗うつ薬にて十分量を十分期間、内服しても効果が得られない際は、他の抗うつ薬への薬剤変更が推奨されています。
2剤目の抗うつ薬にても同様に十分な効果が出ないときには、治療抵抗性うつ病と呼ばれ、増強療法(augmentation:オーグメンテイション)考慮することになります。
増強療法では、クエチアピン、炭酸リチウム、ラモトリギンなど有効性が言われるものは複数あるものの、認可のある薬はアリピプラゾール(エビリファイ)だけでした。
そして、昨年度、ブレクスピプラゾール(レキサルティ)が抗うつ薬の増強療法に用いることが承認されました。
2.なぜレキサルティを追加すると効果が期待できるのでしょうか?
トリンテリックスは、セロトニンに作用しながら認知機能への改善も期待される抗うつ薬です。
一方、レキサルティはドパミンやセロトニンの働きを調整する作用をもち、抗うつ薬とは異なるメカニズムで脳の神経回路に働きかけます。
そのため、
- 意欲が出ない
- 朝起きられない
- 仕事や家事に取りかかれない
- 頭がぼんやりする
- 不安感が残る
といった症状が改善する可能性があります。
もちろん効果には個人差がありますが、抗うつ薬だけでは十分でなかった方にとって、新たな選択肢となることがあります。
3.トリレキ療法が向いている方
次のような方では、主治医と相談のうえ強化療法を検討することがあります。
- 抗うつ薬を6~8週間以上服用しても改善が不十分
- 気分は少し良くなったが社会復帰には至らない
- 意欲低下が強く残っている
- 集中力が改善しない
- 再発を繰り返している
一方で、すべての患者さんに適応となるわけではありません。
双極性障害など他の病気が隠れていないか、現在の薬の量が適切かなどを確認したうえで治療方針を決定します。
4.副作用について
レキサルティでは、
- 眠気
- 体重増加
- アカシジア(そわそわ感)
- 手の震え
などの副作用がみられることがあります。
そのため通常は少量から開始し、効果と副作用のバランスを見ながら慎重に調整します。
5.よくある質問
Q.薬を追加すると依存しませんか?
レキサルティには依存性はありません。
Q.一度追加したら一生飲み続けますか?
症状が安定した後は、患者さんの状態に応じて減量・中止を検討することがあります。
Q.強化療法は珍しい治療ですか?
いいえ。抗うつ薬だけで十分な改善が得られない場合には、国内外の診療ガイドラインでも推奨されている治療法の一つです。
6.まとめ
抗うつ薬を飲んでいても、気分の落ち込みや意欲低下が残ることは珍しくありません。
そのような場合には、「薬が効かなかった」と諦める必要はありません。
薬を変更するだけではなく、現在の治療を生かしながら効果を高める**強化療法(増強療法)**という選択肢があります。
その代表例が、トリンテリックスにレキサルティを追加するトリレキ療法です。
もちろん、適応や副作用については十分に検討する必要がありますが、適切な患者さんでは症状の改善や生活の質(QOL)の向上が期待できます。
「抗うつ薬を飲んでいるのに、あと一歩よくならない」と感じている方は、一人で悩まず、主治医に相談してみてください。
麻布十番クリニックでは、お一人おひとりの症状や治療歴を丁寧に伺い、現在の治療が適切か、強化療法が有効な選択肢となるかを含めてご相談をお受けしています。お気軽にご相談ください。


