メンタルが回復途中だからこそ、夏休みはつらいものです
「子どもは悪くないのに、イライラしてしまう」
「毎日3食作るだけで精一杯」
「一人になれる時間が全くない」
「夏休みが始まってから、症状が悪化した気がする」
このようなお話を、この時期になると多くの患者さんから伺います。
特に、うつ病、不安障害、適応障害、双極性障害、ADHD、発達特性などで通院されている方にとって、夏休みは「イベント」ではなく、大きな環境変化です。
専業主婦(夫)の方でも、働きながら子育てをしている方(ワーキングマザー・ワーキングファザー)でも、ご家族を介護されている方でも、「普段の生活リズムが崩れる」という点では同じです。
決して、あなただけではありません。
「回復途中」は、まだエネルギーが少ない状態です
メンタルの病気は、熱が下がったら治る風邪とは違います。
症状が少し良くなっても、
- 集中力
- 判断力
- 我慢する力
- 人と関わるエネルギー
は、まだ十分には戻っていないことが少なくありません。
そこへ、
- 子どもが一日中家にいる
- 食事を何度も準備する
- 宿題を見る
- 「遊んで」と何度も言われる
- 兄弟げんかの仲裁をする
という負荷が加わると、エネルギーはあっという間に底をついてしまいます。
これは「気合いが足りない」のではありません。
今のあなたの脳が、一日に使えるエネルギーを超えてしまっているだけなのです。
「良い親」でいようとしなくて大丈夫
多くのお母さん、お父さんが、
「夏休みだから思い出を作らなきゃ」
「毎日ちゃんと栄養のあるご飯を作らなきゃ」
「子どもを退屈させちゃいけない」
と思っています。
でも、本当に必要なのは、
子どもにとって”完璧な親”ではなく、倒れない親です。
今日は冷凍食品でもいい。
スーパーのお惣菜でもいい。
レトルトでも、うどんでも、そうめんでもいい。
家の中で映画を見る日があってもいい。
ゲームをする日があってもいい。
夏休みは毎日100点を目指す期間ではありません。
70点どころか、30点でも続けられる生活の方が、結果的には家族全員を守ります。
「今日はこれ以上できない」は、立派な判断です
「もう無理。」
そう思ったら、それ以上頑張らないでください。
心の病気の回復では、
無理をしないことも治療の一部です。
もし体調が悪い日なら、
「今日はお母さん(お父さん)は休憩の日」
と子どもに伝えて構いません。
年齢にもよりますが、子どもは大人が思う以上に状況を理解しています。
「今日は元気がないから少し休ませてね」
そんな一言で十分なこともあります。
子どもにイライラしてしまったら
病気で余裕がなくなると、
いつもなら笑って済ませられることでも、怒ってしまうことがあります。
怒ってしまった自分を責め続ける方も少なくありません。
でも、大切なのは、
怒らない親になることではなく、関係を修復できる親になることです。
もし言い過ぎてしまったら、
「さっきは大きな声を出してごめんね」
「お母さん(お父さん)、今日は疲れていたんだよ」
そう伝えるだけで十分です。
子どもは「完璧な親」よりも、「謝れる親」から多くを学びます。
一人で抱え込まないでください
夏休みは、「助けを借りる練習」をする時期でもあります。
例えば、
- パートナーに具体的にお願いする
- 実家や祖父母を頼る
- 学童や一時預かりを利用する
- 家事代行や宅配サービスを使う
- お弁当や惣菜を積極的に利用する
「こんなことで頼っていいのかな」
と思う必要はありません。
あなたが倒れてしまう方が、ご家族にとってはずっと大きな負担になります。
症状が悪化しているサインかもしれません
もし、
- 朝起きられない
- 涙が止まらない
- 強いイライラが続く
- 不眠が悪化している
- 食欲が極端に落ちた
- 「消えてしまいたい」と感じる
などの症状が続く場合は、
「夏休みだから仕方ない」
だけではなく、治療の調整が必要なサインかもしれません。
薬の調整や生活リズムの見直し、カウンセリングなどによって楽になることもあります。
我慢し続けるよりも、遠慮なく主治医に相談してください。
最後に
夏休みは、子どもにとっては楽しい時間でも、保護者にとっては「24時間勤務」が続くような期間です。
メンタルが回復途中であれば、その負担はなおさら大きく感じられるでしょう。
どうか、「できなかったこと」ではなく、「今日も一日を終えられたこと」に目を向けてください。
朝起きて、ご飯を用意して、子どもの話を聞いて、一日を過ごした。
それだけで十分頑張っています。
この夏は、完璧を目指すのではなく、「倒れずに夏を越えること」を目標にしてみてください。
それは決して妥協ではなく、ご自身とご家族を守るための、大切な選択です。
まだまだ猛暑が続きますが、メンタルクリニックに通院中の皆様が、ご自身を責めすぎず、どうか平穏に無事にこの夏を乗り切れますよう・・・
参考文献
- American Psychiatric Association. Practice Guideline for the Treatment of Patients With Major Depressive Disorder. 4th ed. American Psychiatric Association; 2023.
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Depression in adults: treatment and management (NG222). 2022.
- World Health Organization. Mental Health: Strengthening Our Response. Updated 2025.
- Goodman SH, et al. Parents with depression: Impact on children and families. Annual Review of Clinical Psychology. 2011;7:275-300.
- Prime H, Wade M, Browne DT. Risk and resilience in family well-being during disruptions to daily life. American Psychologist. 2020;75(5):631-643.


