「そろそろ薬をやめたい」「できれば自然に治したい」——
そう感じている方は多くいらっしゃいます。
抗うつ薬や抗不安薬は、つらい時期を支える大切な治療の一部ですが、「やめたい」と思うこと自体はごく自然なことです。
ただし、急な中止や自己判断の減薬は**離脱症状(中止症候群)**を引き起こすリスクがあります。
この記事では、抗うつ薬や抗不安薬をやめたい方に向けて、安全な減薬の進め方や注意点を、心療内科医の視点から解説します。
目次
- 抗うつ薬・抗不安薬をやめたいと思う理由
- 自己判断で中止するのが危険な理由
- SSRI・SNRIなどで起こる離脱症状とは
- 安全に減薬するためのステップ
- 減薬を支える生活習慣とメンタルケア
- まとめ:焦らず、段階的に薬を卒業するために
1. 抗うつ薬・抗不安薬をやめたいと思う理由
患者さんからよく聞かれるのが次のような声です。
- 「調子が良くなってきたから、薬をやめたい」
- 「副作用(眠気・体重増加・性機能の変化など)が気になる」
- 「長く飲み続けるのが不安」
- 「薬に頼らず生活したい」
どれも自然で正直な気持ちです。
ただし、「やめたい」と思うタイミングが、治療的に適切な時期かどうかは慎重に判断する必要があります。
2. 自己判断で中止するのが危険な理由
抗うつ薬や抗不安薬を急にやめると、脳内のセロトニンやGABAのバランスが一時的に崩れ、離脱症状が出ることがあります。
これは「依存」とは異なり、脳が薬の状態に慣れているために起こる一時的な反応です。
代表的な離脱症状は次の通りです。
- 不安感や焦燥感の再燃
- めまい、頭のしびれ、電気が走るような感覚(いわゆる“ビリビリ感”)
- 睡眠の乱れ、悪夢
- 吐き気、食欲不振
- 集中力の低下
特に**SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)**では離脱症状が出やすい傾向があります。
3. SSRI・SNRIなどで起こる離脱症状とは?
代表的なSSRI・SNRIには以下のような薬があります。
- SSRI:セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)、パロキセチン(パキシル)など
- SNRI:デュロキセチン(サインバルタ)、ミルナシプラン(トレドミン)など
- ボルチオキセチン臭化水素酸塩(トリンテリックス)
これらの薬は、脳内のセロトニン濃度をゆるやかに整える作用があります。
そのため、突然やめると脳がバランスを取り戻すのに時間がかかり、離脱症状が起こるのです。
4. 安全に減薬するためのステップ
ステップ① 主治医と「やめるタイミング」を確認する
まずは、症状が安定しているかどうかを一緒に確認します。
目安としては、3か月以上、気分や睡眠が安定していること。
不安が再発しやすい時期(季節の変わり目・環境変化など)は避けましょう。
ステップ② 少しずつ段階的に減らす
抗不安薬や抗うつ薬の減薬は、「週単位で少しずつ」が原則です。
1~2週間ごとに用量を減らし、体調の変化を記録しながら調整します。
中止後1〜2週間は離脱症状が出やすいため、無理せず様子を見ましょう。
ステップ③ 不調が出たら、再び少量戻して安定を優先
離脱症状が強い場合は、「一時的に戻す」ことも治療の一部です。
“やめること”よりも、“安定して過ごすこと”が優先です。
5. 減薬を支える生活習慣とメンタルケア
薬を減らすときは、薬以外の支えを整えることが大切です。
- 睡眠リズムを整える(就寝・起床時間を一定に)
- バランスのよい食事を心がける(タンパク質とビタミンB群)
- 軽い運動や深呼吸で自律神経を整える
- カウンセリングや認知行動療法(CBT)を活用する
- 信頼できる人とのつながりを保つ
これらは、薬をやめたあとも再発を防ぐ「メンタルの筋トレ」になります。
6. まとめ:焦らず、段階的に薬を卒業するために
抗うつ薬・抗不安薬をやめたいときは、焦らず段階的に進めることが大切です。
「やめたい」という気持ちは前向きなサインですが、安全な減薬には医師のサポートが不可欠です。
もし離脱症状や不安が出た場合は、一人で抱えずに早めに相談してください。
当院では、減薬の計画づくりから生活面のサポートまで丁寧に行っています。

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