成人(おとな)のADHDとASDに対するWAIS検査とは
~発達特性を見える化する知能検査~
はじめに
おとなの発達障害(ADHD/ASD)に関する診断や理解を深める上で、「WAIS検査(ウェイス検査)」はとても重要なツールです。
表面的な症状だけではなく、**「その人の得意・不得意のパターン」**を客観的に示してくれるため、診断や支援方針の決定に役立ちます。
WAIS検査とは?
WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)は、16歳以上の成人を対象とした知能検査で、現在は最新版の「WAIS-Ⅳ」が広く使われています。
単なるIQ(知能指数)を出すだけでなく、知的機能をいくつかの側面から詳しく分析します。
主な指標は以下の4つです:
| 指標名 | 内容 | 具体的にわかること |
|---|---|---|
| 言語理解(VCI) | 言葉の理解・知識・表現力 | 会話力・言語的推論力 |
| 知覚推理(PRI) | 視覚的・空間的な推論力 | 図形・パターンの理解力 |
| ワーキングメモリー(WMI) | 一時的な記憶・注意の保持 | 集中力・作業記憶 |
| 処理速度(PSI) | 情報処理の速さ | 作業のスピード・丁寧さ |
ADHD(注意欠如・多動症)でのWAISの特徴
ADHDの方では、しばしば次のようなプロファイルが見られます。
- WMI(ワーキングメモリー)やPSI(処理速度)が低め
- つまり、「理解できるけど、作業スピードや集中の持続が難しい」傾向
- ミスが多く見えても、知的理解力(VCI)は十分にある場合が多い
例:
説明を聞けばよくわかるが、提出物の期限を守るのが苦手/ミスが多い
→「理解力」よりも「注意・作業効率」に課題があるタイプ
このようにWAIS検査で得られた結果は、薬物療法や環境調整の方向性を考える上でも大切な情報となります。
ASD(自閉スペクトラム症)でのWAISの特徴
ASDの方では、以下のようなパターンがしばしば見られます。
- VCI(言語理解)とPRI(知覚推理)に差がある
- 「得意な領域」と「苦手な領域」がはっきり分かれる
- 一般的に、処理速度(PSI)が低めに出ることも多い
例:
図や数字で考えるのは得意だが、抽象的な会話が苦手
→「知覚的思考」が強く、「社会的文脈の理解」が難しいタイプ
WAISの結果をもとに、「どのような支援・配慮があると力を発揮できるか」を検討できます。
WAIS検査の流れ
- 事前面談 生活や学習・仕事での困りごとを伺い、検査目的を明確にします。
- 検査実施(約90〜120分) 医療機関または臨床心理士が個別で実施します。
- 結果説明(フィードバック) 後日、グラフやプロファイルをもとにわかりやすく説明します。
- 診断・治療・支援方針の決定 必要に応じて診断書や報告書を作成します。
- こちらの報告書はMENSA会員の入会資格の一つとして利用いただくことが可能です。
検査を受ける意味
WAIS検査は「診断のため」だけでなく、自己理解や今後の生き方を考える手がかりにもなります。
- 自分の得意な仕事・学習スタイルを知る
- キャリア選択の一助になり得る
- 職場や学校でのサポートを受けやすくする
- 医師やカウンセラーとの治療方針を明確にする
- 何よりも、診断を明確にすることで、治療薬を処方できる
- 生活の質があがり、日常生活への支障がなくなる(または減る)
まとめ
ADHDやASDは「能力が低い」ということではなく、能力のバランスが独特であるということです。
WAIS検査は、そのバランスを科学的に可視化し、より適した環境や支援の形を探すための重要なステップです。
検査費用・当院での検査実施までの流れ
当院では、発達特性の理解や診断の一環としてWAIS検査を実施しています。
検査は心理士と1対1で90〜120分(約2時間)かかりますので、日時調整の際には余裕を持って臨んでください。
検査・診察は日本語・英語どちらにも対応しております。
土曜日(9時~18時)も対応しています。
検査をご希望の方は、オンライン予約またはお電話0368094515にてお問い合わせください。
現在、ADHD検査をご希望の方が増え、予約枠の確保が難しくなっていますが、当日無断キャンセルや時間変更が多発しておりますため、事前決済をお願いしております。
料金は自由診療となり、¥38,000(税込)です。こちらの料金にすべて検査代、結果報告資料作成費、フィードバックの面談を含みます。詳細は、スタッフまでお問合せください。


