はじめに
2月から3月にかけては、寒暖差・日照時間の変化・年度末の業務負担・進学や異動などの環境変化が重なり、精神症状が悪化しやすい時期です。
実際に外来では、
- 気分の落ち込みが再燃する
- 不眠が悪化する
- 不安・焦燥感が強くなる
- 自律神経症状(動悸・腹痛・頭痛・倦怠感)が増える
といった相談が増加します。
本記事では、この時期特有の精神症状の特徴と対処法について、医学的観点から解説します。
目次
- なぜ2〜3月はメンタル不調が増えるのか
- この時期に多い疾患・症状
- 自律神経とホルモン変動の関係
- 季節性うつ(Seasonal Pattern)との関連
- 自分でできる予防と対策
- 医療機関を受診すべきサイン
- 当院での治療アプローチ
1. なぜ2〜3月はメンタル不調が増えるのか
① 日照時間の変化
冬至を過ぎても、実際に「明るさ」を体感できるのは2月以降です。
セロトニン分泌は日光曝露に依存しており、冬季は低下傾向にあります。
② 気温・気圧変動
寒暖差が大きく、自律神経の調整負荷が高まります。
特に以下の症状が増えます:
- 片頭痛
- 過敏性腸症候群
- 倦怠感
- 不眠
③ 環境ストレス
- 年度末業務
- 受験・進学
- 異動内示
- 人間関係の変化
心理社会的ストレスがピークになりやすい時期です。
2. この時期に多い疾患・症状
■ うつ病の再燃
寛解していた患者様の再燃が多いのがこの時期です。
特に、
- 早朝覚醒
- 食欲低下
- 意欲低下
が目立ちます。
■ 不安障害・パニック症
寒暖差や疲労蓄積により、自律神経過敏が起こりやすくなります。
- 動悸
- 息苦しさ
- めまい
- 予期不安
■ 適応障害
4月を前に、環境変化への予期不安が強まります。
「まだ何も起きていないのに不安」という状態が典型です。
■ 双極スペクトラムの気分変動
春は躁転リスクが上がる時期でもあります。
抗うつ薬単剤治療中の患者様は特に注意が必要です。
3. 自律神経とホルモン変動
寒暖差は交感神経優位を持続させます。
その結果:
- コルチゾール上昇
- 睡眠の質低下
- 炎症性サイトカイン増加
これらが抑うつ症状を悪化させる可能性があります。
女性ではホルモン変動(特に更年期世代)も影響します。
4. 季節性うつ(Seasonal Pattern)
DSM-5では「季節性パターン」として記載されています。
典型例は:
- 秋冬に悪化
- 春に改善
しかし日本では「冬に悪化 → 春先に不安・焦燥が強まる」タイプも多くみられます。
5. 自分でできる予防と対策
① 朝の光曝露(最低15〜30分)
できれば起床後1時間以内。
② 睡眠の固定
就寝時刻よりも「起床時刻固定」が重要。
③ 血糖変動を避ける
急激な糖質摂取は気分変動を悪化させます。
④ 軽い有酸素運動
週3回、20分以上。
⑤ 予定を詰めすぎない
3月は「攻める月」ではなく「整える月」と位置付けることも有効です。
6. 医療機関を受診すべきサイン
以下の症状が2週間以上続く場合は受診を検討してください。
- 希死念慮
- 業務遂行困難
- 不眠が持続
- 食事が取れない
- 強い不安発作
早期介入は再発予防に有効です。
7. 当院での治療アプローチ
当院では、
- 精神療法
- 薬物療法
- 漢方治療
- 必要に応じた心理検査
を組み合わせ、個別に治療方針を決定します。
季節要因による一時的悪化か、基礎疾患の再燃かを慎重に鑑別します。
参考文献
- American Psychiatric Association. DSM-5-TR.
- Lam RW et al. Seasonal Affective Disorder. Lancet. 2006.
- Rosenthal NE et al. Seasonal affective disorder. Arch Gen Psychiatry. 1984.
- Partonen T et al. Seasonal changes in mood and behavior. J Affect Disord.
まとめ
2〜3月は、医学的にも精神症状が悪化しやすい時期です。
「気のせい」ではなく、生理学的背景があります。
悪化を感じたら、早めにご相談ください。
ご予約について
初診・再診ともにオンライン予約が可能です。
不調が軽度の段階でのご相談をおすすめしています。


